第10章 雨ざらしの絆

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「湊くんは、無事家に戻ってきた秋津さんに引き渡しました。 あとのことは…明日話します。――彼女の手、離してもらっていいですか?」 僕の要求に日下部さんは、皮肉に笑う。すっかりヒーロー気取りだな、と。 「嫌だ、って言ったら?」 わざと僕を挑発するように、日下部さんはありこさんの肩にも手を置いて、ぐっと自分の方に引き寄せた。 「アンタに、そんなこと言う資格はねえ」 ありこさんが食ってかかって。 僕には、あるのかな。 そんな迷いを断ち切るように、深く頭を下げる。 「返して、ください。ありこさんは僕のだから」 「へえ」 日下部さんは、意外そうに眉を上げて、目を見開いた。 真意を探るように、じっと見つめる視線に、飲まれそうになりながら、僕はそれを受け止める。 「そんなに大事なんだったら、待ちぼうけさせるようなこと、するなよ」 何処か面白そうに口角をあげると、日下部さんは大きな手を、ぱっと開いて、ありこさんの背中を押した。 拘束が解かれた瞬間、ありこさんは僕の胸に飛び込んできた。 自分の身体の一部が戻ってきたような、安堵感を噛み締めるように、腕を回した。 「おせーよ、ばか」
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