第10章 雨ざらしの絆

4/48
前へ
/679ページ
次へ
ぎゅっと、僕のシャツの胸倉を掴んで、震える声で、ありこさんは言った。 憎まれ口も、けなし文句も、いつも通りの貴女が嬉しい。 「ごめん」 「謝るくらいなら、もっと早く帰ってこい」 「だね」 髪も肩も腕も雨に濡れてて、冷たくなってた。秋津さんの家から走ってきた僕よりずっと。 少しでも、温めてあげたくて、僕はありこさんの身体を僕の腕で包み込む。 「そんなんだから、いったん家に帰した方がいい、って判断しただけだからな」 珍しく自分の行動の言い訳に走る日下部さん。 知ってますよ。 下心でも恋心でもないことは。 だから、やっかいなんだけど。 「ご迷惑かけました」 「思い知った?相沢。オマエの中途半端な優しさで、笠原がどれだけ不安になったか」 悔しいのは、日下部さんの言葉に一言も返せないからじゃなくて。 僕がありこさんを不安にさせたのが、事実だからだ。 何で、それを日下部さんが指摘するのか――。 自分から別れたくせに。
/679ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2819人が本棚に入れています
本棚に追加