第10章 雨ざらしの絆

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肩に、背中に、腕に、振動が伝わる。 それはありこさんからのものだって、わかったけど、泣いてるのか、笑ってるのかわからなかった。勿論その理由も。 「ありこさん?」 恐る恐る名前を呼ぶと、今度は、ありこさんははっきり笑い声を立てた。 「な、なに」 「だって、さっきのこれ見よがしなんだもん。穂積さ。実はすっごく負けず嫌い?」 「……」 「そんで、もんの凄く怒ってた?」 「別にっ」 怒りなのか焦りなのか、ともすれば殴りかかりたくもなる感情を、抑え付けるのに必死だった。 僕の車のまん前に来て、僕はありこさんを抱えたまま、助手席のドアを開けた。 ありこさんの脇を掴んで、そのままシートに座らせる。 額に張り付くくらい、濡れた前髪をハンカチで拭いて、車内に積んであった毛布をありこさんの肩にかけた。 「今日はもう行けないね」 約束して楽しみにしてた神野さんのレストラン。 時計とありこさんを交互に見ながら、僕は呟く。
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