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左の肩に強烈な痛みが巡る。右手を肩に当てそのままキツく押さえるが、紅い液体は肌を伝い落ちていく。片膝と片腕でようやく体を支えている幼顔の少年の目の前には、恐らく同い年であろう少年が、血を流すナイフを片手に微笑んでいた。
「さく、や……」
「何かな? 架音」
辺りは暗い。月の光だけが室内に明かりを入れているが、それだけでは全てを見る事は出来ない。それでも、左肩を咲夜に刺された架音は、ある程度の状況はわかっていた。
吐き気がする程の血のにおいと、擦って描かれたような液体の跡。暗いおかげで、細かい箇所まで見えないのが幸いだが。
嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ。
この状況が。
嘘であってほしい現実が。
親友が犯したことが!
疑問と感情が入り乱れる。実際にナイフで刺された肉体は少なからず恐怖と緊張に固まっていて、それが焦りを煽っている事も知っている。そこまで知っていて出た言葉は。
「ッ、どうしてッ……」
咲夜はくすりと笑んだだけ。暗いねぇと呟きながら、丸い蛍光灯のスイッチがあるところへ歩いていく。
ドクリ。心臓が鳴る。
止めてくれ。
それは、それだけは!
全てが、目に映ってしまう!!
─────くす
「光は、時に残酷さ」
パチリ
そして、光は映し出す。
ばらばらに撒かれた両親の姿を。
「あぁああぁああアァッ!!」
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