第1章

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「あたしが切るよ」 包丁を持とうとした時、ふっと京にぃに手を抑えられる。 「しぃちゃん、また怪我するよ?俺が切るからしぃちゃんは持っていくの手伝って」 「…はーい」 あたしは超不器用。 料理なんて、卵焼きでさえ作れない。 だから包丁なんて持ったら、まず間違いなく怪我をする。 そんなあたしを気遣ってか、器用なことをする時には京にぃがいつも助けてくれる。 治したいなー、とはずっと思ってるけど、そんな簡単に治るもんでは無いらしい。 なんて考えているうちに、京にぃはケーキを4等分に切り終えていた。 「しぃちゃん、手伝って」 「はーい」 うわぁ…!すごい… ケーキの断面はフルーツがたくさん入っていて、ピンクやオレンジ、ライムなどの色のスポンジケーキの層が何層も重なっていた。 「さすが千香だよね」 京にぃも感心している。 不器用が治ったところで、お姉ちゃんには叶わないか。 こうやって毎回のように不器用な自分を治すことを諦める。 …だって、ねぇ。 こんなに器用なことが出来る人が近くにいたら治す気無くすよね…
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