第1章

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「しぃちゃんもいつかは出来るようになるよ」 あたしを見てやわらかく微笑む京にぃを見ていると、なぜか安心できる。 本当にいつか出来ちゃいそうな気分にさせられてしまう。 「うん!いつかは作ってやるもん!」 「しぃの"いつか"はいつなんだろうな」 寛人がそう言って笑い、お姉ちゃんも笑っていた。 …京にぃまで苦笑してるよ。 だけどそんな3人を見て、あたしもつられて笑ってしまった。 ――プルルルルッ、プルルルルッ、プルルルルッ… 突然誰かの携帯が鳴る。 「あっ、私だ」と、お姉ちゃんがポケットから携帯を出す。 一瞬見えたのは"翔哉"の文字。 「翔哉くんからの電話?」 「うん。ちょっと出てくるね」 "あっ、もしもし"と言いながら、お姉ちゃんは部屋を出ていった。 「相変わらずラブラブだな、おい」 寛人は、ちょっと呆れた口調で言う。 「お姉ちゃんと翔哉くん、毎日電話とメールしてるよね」 「そういえば、あと10日で11ヶ月記念って翔哉が言ってたよ」 「もう11ヶ月も付き合ってるんだ…長いねー」 あたしは"恋"とか"付き合う"とかよく分からない。 ただ、お姉ちゃんが翔哉くんとよく2人で出かけたり、一緒に学校から帰ったり、『好き』とかの言い合いをしてるのはよく見てる。 『"付き合う"ってそういうことなのか』と思う反面、『それって付き合わなくても出来るんじゃない?』とも思う。 それに、毎日のように会ってるのに、毎日電話とメールまでしてる。 毎日する意味って何があるの? だってそんなに毎日、1日中も話す内容なんかないじゃん。 …色々考えてたら頭いたくなってきた。 元々あたしは、"考えるより動くが先"がモットーの子なんだから、考えて答えが出るわけない。 …やっぱり"付き合う"ってよく分かんないや。
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