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深夜0時に到達しないころ、オレは雑居ビルの屋上にいた。立ち入り禁止の札が貼られていたが、そんな物気にするオレではないし気にする必要もない。
事実オレを叱りにくるような人間もいない。
やけに静かで自分の心音と呼吸音がやけに大きく聞こえるくらいだ。
ふとこの世界が自分の知っているそれとは全く別のものに思えた。
明け方に見るやけにだるく現実味のない夢の一部のような錯覚を起こしたのだ。
そんな実の生らない思考を身を刺すような低い風が遮った。
思い出したかのように上を向けば雲が目の前にある。
「こりゃ一雨来そうだよ」
誰にともなく語りかけたが返事が帰ってくるわけもない、オレは手元にあった傘を手に取り立ち上がった。
気圧のせいか、長時間座っていたせいか、あちこちの関節が痛い。
少し肩を回したりしてストレッチしたあとオレは屋上から飛び降りた。
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