8人が本棚に入れています
本棚に追加
「!?
しまった!
あたしが触れたから霊力が同調(シンクロ)しちゃったんだわ!」
頭を抱え苦しむ春の姿を見て花音は焦った。
『見える……。
これは俺の……。
前世……?』
戻っていく前世の記憶に春は戸惑う。
「……今は普通の人間として暮らしてたかもしれないけど生まれつき霊力が強い貴方には潜在能力があったのね」
記憶を取り戻していく春を見ながら花音は冷静に判断していく。
『言ってる意味が……
よく……わか…んない……んだ……が……』
現世と前世の狭間に立たされている春は混乱している。
「あたしは前世の記憶を持ったまま転世してた」
花音は静かに語りはじめる。
『転生……?
何を馬鹿げた事を……』
薄れゆく意識を集中させ、春は意識を保つ。
「生きとし生けるものは死を迎えたら、来世へ転生する。
転生する時に前世の記憶をリセットされる。
折角知らずに現世で暮らしていたのに……」
悲しげに花音はいう。
『……何だよ。
昔知り合いだったみたいな言い方しやがって』
ガンガンと痛む頭で春は必死に理解しようとしている。
「前世を知らない方があたしも貴方も幸せだったのに……。
あたし達は結ばれる事はないのよ。
そういう、運命……」
そう言って花音は涙を流した。
最初のコメントを投稿しよう!