prologue

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 なにが起きたんだろうか?  俺の身体は突然激しい衝撃と共に宙を舞い、濡れた港のコンクリート舗装に打ち付けられた。 「……」  まるで硬くて冷たい鉄の塊に跳ねられたような感覚。  肺が潰れたのか喉に血が溜まり、溺れたように息苦しい。  あぁ……くそ痛ぇ。  仰向けに落とされたまま視線を自身の身体に向けると、文字通り無残な姿になっていた。  痛いはずだ。肺を覆った肋骨が折れて胸から飛び出している。  きっと四肢の骨も折れているのだろう。指先に神経を集中させてピクリと動かせばズキンと痛みが電流のように駆け抜けた。  ワケわかんねぇ。  鉛のように重い身体。断続的に全身を駆け巡る激痛。人は一定以上の痛みは感じないらしいがその水準はいったいどれくらいなのか。  きっと声を発する事が出来たなら凄まじい絶叫を奏でていただろう。それ程までにこの絶え間ない痛みは痛烈なものだった。 「まだ生きてたか。人間にしてはタフな奴だ」  不意に野太い男の声が呟く。  誰だ?  視界に映る曇天に1人の男が入り込む。デカい。2mくらいはあるのではないか?  薄汚れた黒のトレンチコートを身に纏い、飾り下のないクラシックな帽子を深々と被ったその大男は俺を見下ろしながらジュルリと舌なめずりをしてニヒルな笑みを浮かべる。 「活きが良くてよろしい。実に旨そうだ」  活き? 旨そう?  俺には大男の言っている意味はわからなかったが、なんとなく状況は呑み込めた。  俺、コイツに殺されるのか。
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