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ホームの向こうから 気動車が 駆けてくる音
三脚立てた 撮り鉄が一斉にシャッターをきる
拡散する夕暮れ 泣き腫らしたような陽の赤
融けるように少しずつ
終わりに近づく鉄路
まだ走っていたいと夢を見た
夜の風に揺れるカーテン
錆びて色褪せたタイフォンから 溢れる汽笛は泡のよう
最後の運用を 気を引き締めて走る
今までの記憶 蘇り消える
終着の駅にさ 着きたくないと思う
このままいつまでも走り続けたい
鉄達や沿線民の歓声が
そこにいるけど
見えない誰かの 叫び声が飽和して反響する
―ありがとう さよなら
耳鳴りが消えない 止まらない
―ありがとう さよなら
耳鳴りが消えない 止まらない
鉄路駆けた昨日の夢を見た
真夜中の駅の広さと静寂が 胸につっかえて
上手に息ができなくなる
あの工場内で 解体されれば そしたら
きっと眠るように消えていけるんだ…
僕のいない朝は
今より ずっと 素晴らしくて
全ての歯車が噛み合った
きっと そんな
世界だ…
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