第一章 壱・世の道は

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 結局のところ、最初から最後まで世道未然の手の上で踊ることになるのは解りきっていたことだし、別に抗おうなんて考えてもいない。  “暇だったから”。  理由なんて、それだけだし。 『ふむ。なら手っ取り早く、問い掛けの方を済ませようかのう。はてさて、儂がお前に聞きたいことはこれだけじゃ』  一体、何を訊かれるのかと思わず身構える俺に、世道未然はやけに軽やかな調子で問いを紡ぎやがった。 『お主、幼女を好いておるわけじゃないんじゃろ?』 「…………………は?」 『いやはや、儂とて恥じらいがあるのじゃぞ。何回も口にするのは憚れるが、ここは可愛い可愛い孫のためじゃ。より良く解りやすく、簡潔に言い替えよう。そのぐらいの苦汁を飲むべきじゃしな』  聞き間違いだと思いてぇ。  俺は狭い裏路地の壁に背を預けながら、携帯片手に信じてもいない神に向けてお祈りした。願わくば、さっきの糞ジジイの発言が嘘か幻聴であってくれと。  奴は、この世の裏側に存在する権力と財力、暴力と忌能が蔓延る人外魔境の中心に“在る”『七忌名(なないな)』の一角、戦闘の若紫の分家を数十年も束ねていた人間だ。  家族の中には、まるで《信仰》を司る“時折家”のように、世道未然を信じ崇める者までいるぐらいなんだぜ。  そんな、《智謀》の名を受け継ぎ、家督を全うし、引き継ぎまで終わらせた怪物、いや化け物があんな問いを発するわけが………… 『コホン』  咳払いし、 『のう、紡よ、幼女は好きか?』 「それが可愛い孫に訊くことか!? 俺のテメェへの尊敬とか羨望とかを速達で今すぐ送り返しやがれッ!!」
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