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『ソレ』は答えた。透き通るような声音が振動して耳に届く。やはり表にいる存在じゃない。これは、紛れもなく、芥よりも溢れて零れて“そこにあるからあるだけ”の存在、怪異。
まさしくそれに相応しい、奇妙さと神々しさと禍々しさを兼ね備えていた。
「コイツらを、こうしたのもお前か?」
『如何にも』
「理由は?」
『ただ、そこにいたから』
「方法は?」
『貴様、わざわざ解っていることを尋ねることほど、相手を馬鹿にする行いはないであるぞ』
どうやら『ソレ』は俺が、世道紡が裏側の人間ではあることを一瞬で看破したようである。
……いや、ごくごく当たり前か。魑魅魍魎の類いは、同じ匂いのする存在を見逃さない。見棄てることはしても、見逃さない。
見て、逃してくれない。
「で? 神様が、アイヌの精霊が何でこんなところにいやがるんだ? それも全裸で。十八禁は間違いない光景だぞ」
『欲情したか?』
「まさか」
吐き捨てる。
「願わくば、今すぐその身体を叩き潰してやりてぇよ」
『ソレ』の姿を客観的な物言いで語るなら、まさに官能そのものだ。欲情をそそる肉付きに、巨乳だし、美人だし、美しい身体付きだなと世界で絶賛されそうな姿形ではあるけれど、俺には到底美しいモノに見えなかった。
髪は後ろ首で二つに分けられている。色は白銀。眼は蒼い。ここまでの蒼さを認識したのは“身代直の眼を見た時以来だな。
『ほう? 貴様、妾のせくしぃーぼでぃーを見ても、欲情せぬと申すか』
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