第一章 壱・世の道は

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「無理して横文字を使っても似合ってないと思うけどな。それよりも、お前、神落としって言ったよな」 『左様。神落とし、乃ち言葉の通り、神を落とす儀式の類いであるぞ』 「へぇ」  俺は、世道家を勘当された身であるけれど、それなりにご先祖からの知識を会得している。根本的な、それでいて世道家の機密にあたる記憶は、智謀の名前を受け継ぐことを意味する“世道家当主”にならないと共有できない。  まぁ、それは良い。  今、この怪異を目の前にして、俺がすべきことはたった一つだ。 『神落とし』。……成る程。アイヌ、つまり北海道の原住民であったアイヌ民族にとって、神とは“精霊”の一種であったようだ。ともすれば、多神教に成りうるそれらは様々な事柄に別れ、アイヌ民族の生活を支えてきた。しかし、アイヌ民族と神は“対等な関係”であり、もしも神に至らぬ所があれば、神の座から下ろされることもあったようで。 「要するに、だ。お前は、アイヌ民族が抱える神であったにも拘わらず、神落としによって神の座から落とされた憐れな怪異って訳か」 『そうではあるし、不当な処分に怒り狂ってそこの馬鹿共を殺してやったのだ』  まったく乱暴な神様もあったものだ。いや、精霊か。本物の神、いや、存在しているかどうかも定かではないけれど、もしも天照大神が表の世界に降り立ってきていたら、まず間違いなく尋常じゃない事が起きるだろう。  確信はないし、証拠も無いが。  だって、天照大神って、天皇家の祖先神らしいしな。
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