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俺の好みとは真逆の『ソレ』だけど、糞親父に会わせようとは到底思考えられなかった。あの野郎は、ヘドが出るくらい根底から“裏”の人間だからな。
表がどうなろうとどうでも良いという性格に、俺は辟易して反発した結果、勘当されたのだ。
『世道、未然か。良かろう、ソイツと会う。じゃから、呼べ』
「は、俺が?」
『妾は生憎動きとォない。この世には、携帯電話なるものがあるのだろう? それで呼べ』
本当、どこまで現代的な神様なんだろうか……。
「構わないが、その後、俺はお前に一切関与しないからな」
『ふ、良かろう』
『ソレ』が裏の存在、または魑魅魍魎の類いで、はたまた世道家と関わったことがあるモノならば、俺にも僅かながらに関係性がなきにしもあらず、だよな。
ジジイを呼び出して、それで終わりだ。
「今、世道未然を呼んでやるよ」
『そういえば、貴様、名前は何と言う?』
携帯電話を開こうとした時、問われた。疑うこと無く、名前を答える。
すると、
『紡、か。妾は、“イムカ”であるぞ。神名は他にあるがな』
「ああ、そうかよ」
どうでも良かった。
心底どうでも良い名前だと思っていたそれを、俺が今まで生きてきた中で最も多く口にする名前である事実など、
このときの世道紡には、知る由もなかった。
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