第一章 壱・世の道は

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―――― 『ふむふむ。神落としされたアイヌの精霊と、まさか“偶然的に”会うとはのぅ。いやはや、さすがは儂の孫』  世道未然に電話して、事情を詳しく説明すると、何とも予想外な反応をされた。例えるなら、そう、そんなこと想定の範囲内でしたよ、とでも言いたげな感じ。  ちなみに、説明している間もアイヌの元精霊はやたらとエロいポーズをしたまま俺に寄り添ってきた。  取り敢えず顔面を蹴ることで黙らせてから、改めてジジイの反応を訝しげに伺うことに。 「おいおい、ジジイ。アイヌの神様とやらが神落としに遭ったんだぜ? もっと驚いても良いんじゃねぇのか」 『神落としは、過去に数百件も起きておる。それぐらいアイヌ民族は、神と対等な関係じゃったからのう』  別段、驚いて騒ぐような事でもあるまい、と冷たく言い返された。  何だ、コイツ? さっきの世道未然とは反応も感情も素性すらも違う『イキモノ』に思えてきた。 「へぇ。じゃあ、アンタにならこの神様の処理の仕方が解るんだろ? コイツもアンタに会いたいみたいだし、任せても大丈夫だよな?」 『あぁ、待て待て。勝手に儂に押し付けるでない。紡よ、少し儂の意見も聞いとくれ』 「何だよ。ジジイなら、神落としの逆転ぐらいできるんだろ?」 『お前は、色々と勘違いしておるようじゃ』
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