第一章 壱・世の道は

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 一蹴された。  年老いて威厳や畏怖を感じさせる声音を出せなくなったジジイだが、ここぞと言う時に低い声で割り込まれる。  絶妙とも言えるタイミングで。 「何を勘違いしてるって?」 『良いか、世道紡よ。アイヌ民族は神を落とす。神落としを罪とは思わん。神に至らぬ所があれば、問答無用で神を平然と落とす。しかし、ここからが問題なのじゃよ』 「だから、何が問題で、俺が何を勘違いしてるって?」 『どうして、北海道の神様が未塾市に落とされたのじゃ?』 「…………」 『アイヌ民族が落とせる神は、北海道の神様だけじゃぞ。それは、絶対的で揺るぎようのない法則。そして、落とされた神は北海道に居座る。しかして、どうして、北海道の神が未塾市におるのか、それが問題で、それがこの怪異に厄介な所と言う訳じゃ』 『ソレ』は、イムカは神落としに遭った神様で、アイヌの精霊と口にした。  ならば、どうして、そのアイヌの精霊が未塾市にいるのか。 「……つまり、ただ神に戻すだけじゃ足りないってことかよ」 『形だけなら解決できるが、それは根本的な物ではないのう。逆に戻せたとしても、他の魑魅魍魎の類いと相容れぬ形となり、より悲惨な神となって落とされるかもしれん。今度こそ、他の裏の人間、……まぁそうじゃのう、下上(さかがみ)とかにのう』 「そうなったら……」 『まぁ、それを防ぐのがお前の仕事じゃ』
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