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「…………はい?」
素で聞き返してしまった。人間、本当に意表を突かれた言葉を投げ掛けられると、思考が停止してしまうらしい。
身を持って体験してしまった。
『じゃから、その怪異、名前をえーと、イムカじゃったのう。それを神へと戻して何とかするのがお前の仕事じゃ。解ったか?』
「い、いや、ちょっと待ってくれ! 何で俺がーー」
ここまで来て、俺はようやくジジイの企みや魂胆や計略が解った。全ては嵌められていたのだ。この狸ジジイに。
イムカに遭遇する直前に話していた仕事。それはおそらくこの事だったのだろう。
「……全て、アンタの思惑通りって奴か」
『はてさて、何のことを言っておるのやら……』
イムカが神落としに遭った事をどうしてジジイが知っているのか、そこら辺は訊いても教えてくれないだろう。
けれど、この糞狸が一枚噛んでいるのは事実。神落としそのものに関与している可能性も否定できない。
俺が逢うことも見越して、電話を掛けてきて、仕事の話を持ち出した。
ふざけんな。
「やってられるか!」
『もし、解決できたなら、儂の倅が下上の実験に少なからず関与していたことを一族内にバラそう。世道式御に居場所は無くなること確実じゃ』
「………………取引かよ」
『どうじゃ、悪くないじゃろ?』
心底嫌っていた世道式御よりも、躊躇い無く息子を売ることのできる世道未然の方が、きっと性格的に腐っていることを察したにも拘わらず、数秒後、俺は首を縦に振っていた。
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