第一章 弐・裏語り

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 イドそのものや、イドが仕出かした現場を一般人は感知できない。近寄ることも認識することも不可能だ。イドとは、既に怪異の一部なのだから。  そんな中、身代直が今までどうやってイドを見つけて狩りしていたか。  全てはこの目の前の人間、若紫初姫によるもの。  自称ながら『安楽椅子探偵』と名乗るぐらいだから、探偵の端くれみたいな仕事も出来る。“縁結び”もその役に立っているようだ。  いずれにしても、その応用で、イドを発見して、調査した結果を身代直に与え、それを元に彼女はイド狩りをしている訳。  けれど、イドの“成りそこない”がいると、イド狩りまでに掛かる時間と労力を大幅に解消できる。  理由は、成りそこないはイドを惹き付けるからだ。それだけで遭遇の確率は爆発的に上昇する。  にしても、成りそこないを見付けるとはな……。  幸運なのか、  それとも不幸なのか。 「実は、昨夜行ったイド狩りの現場をその同行者に見られてしまったらしくてね。それで、その子が“成りそこない”だと気づき、早速話をして、たった今、イド狩りに出掛けた所だったんだ」 「よく納得したもんだな」 「私も驚いたよ」  イドやソピアーを説明したのかは、敢えて訊かなかった。そちらの問題は、そちら側で片付けるべきだし、俺が関与すべきモノじゃない。  複雑さがより混迷を極めてしまう。  ただ、これだけは聞いておきたい。 「その、同行者の名前は?」 「福井莉里くん、だよ。君も、彼と話してみるかい? 結構、心打たれる物があると思うけどね」 「遠慮する。身代直の同行者で一杯一杯だろうに、そこに俺まで入り込んだら、流石にヤバイだろ?」
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