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それなりに頭が良く、また皆勤賞の孤城匠はそれなりの大学を受けた。勿論、合格。文句無しに大学進学を決めた。
父も母も喜んだ。
親戚も。隣人も。友達も。
それも、孤城匠が単車で“人を跳ねる前”までだった。
幸い刑務所に入ることは無かった。いや、この場合、不幸なのかもしれない。何故なら間近で、止める暇もなく、家族が壊れていったのを見る羽目になったのだから。
大学進学は取り消し。父と母は悲嘆に暮れ、親戚は孤城匠を厄介者扱いにして、隣人は陰口を、友人は一斉に離れていった。
百八十度、変わった。
世界の有り様が変わったようにも思えた。
それだけならまだ良かった。家族はバラバラになっていたけれど、家庭はまだ機能していたから。
しかし、 同じ頃、父がリストラに遭い、全てが壊れた。とうとう長年の積もり募ったストレスが一気に吹き出したのだ。
壊れたように、母を殴った。
母が泣き叫んでも、止めなかった。機械のようで、それでも眼だけは異常に忌常だった。まるで殴ることが“本能”であるかのように殴り撲りなぐり続けた。
そして、母は死んだ。
呆気ない終わり。ただの肉と化した四肢を持ち上げ、父はそれを投げ回した。ハンマー投げのように。母だったモノは、薄型テレビの画面を頭部で割って、反対側に突き抜けていた。
テレビから母が出てきているかのような光景だった。
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