第一章 弐・裏語り

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 “助ける”なんて、そんなの、裏の俺に出来るわけが無い。忌能を携えた俺に可能な事と言えば、助けるなんて程遠い、血みどろで汚くて要領を得ない“戻し方”しか存在しない。  それが、精一杯だ。 「戻す、か。君はいつだってそれだな」 「物語の主人公くらいだぜ、助けることが出来る奴なんて。おあいにく様、俺は、主人公なんて柄じゃねぇからな」 「私も、“脇役”でしかないよ」 「お前はいつだってそれだな」  若紫初姫はいつだって脇役に徹する。表の舞台に出ることなく、裏方に回って華やかな表の舞台を支えている。  脇役。結局それは、主人公になれない。 「助けるなんて無理だし。救うなんて論外だ。人はいつだって救い救われたいがために、己自身を誤魔化しているだけなんだから」 「君はひねくれているな。友達もいなさそうだ」 「年がら年中、こんな所に引きこもっているお前に言われたくないね」  授業にも出ないで、『帰宅部』なんて馬鹿げた部活動をしている若紫初姫にだけは。  そもそも、部員はいるのか? 「直くんが入ってくれているよ。自称、幽霊部員らしいけれどね。君も入るかい?」 「残念。俺は別の部に入ってるから。というか、人数が足りていないだろ? 大丈夫なのか?」 「それは何とかするつもりだし、何とかなるような予感があるから大丈夫さ」  ……本当かよ。
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