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“助ける”なんて、そんなの、裏の俺に出来るわけが無い。忌能を携えた俺に可能な事と言えば、助けるなんて程遠い、血みどろで汚くて要領を得ない“戻し方”しか存在しない。
それが、精一杯だ。
「戻す、か。君はいつだってそれだな」
「物語の主人公くらいだぜ、助けることが出来る奴なんて。おあいにく様、俺は、主人公なんて柄じゃねぇからな」
「私も、“脇役”でしかないよ」
「お前はいつだってそれだな」
若紫初姫はいつだって脇役に徹する。表の舞台に出ることなく、裏方に回って華やかな表の舞台を支えている。
脇役。結局それは、主人公になれない。
「助けるなんて無理だし。救うなんて論外だ。人はいつだって救い救われたいがために、己自身を誤魔化しているだけなんだから」
「君はひねくれているな。友達もいなさそうだ」
「年がら年中、こんな所に引きこもっているお前に言われたくないね」
授業にも出ないで、『帰宅部』なんて馬鹿げた部活動をしている若紫初姫にだけは。
そもそも、部員はいるのか?
「直くんが入ってくれているよ。自称、幽霊部員らしいけれどね。君も入るかい?」
「残念。俺は別の部に入ってるから。というか、人数が足りていないだろ? 大丈夫なのか?」
「それは何とかするつもりだし、何とかなるような予感があるから大丈夫さ」
……本当かよ。
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