第一章 弐・裏語り

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「私が、若紫だからかな?」 「俺が、世道だからだ」  それはどうしようもなく、今さら俺たち一個人の力なんかでは到底変えようの無い、先祖代々から織り成された宿命のようなモノ。  DNA《遺伝子情報》に直接小刀で刻みこまれた。そんな感じ。俺たちは俺たちであって、決して俺たち個人ではない。  繋がっている。  裏は裏と。表は表と。  裏と表が繋がることはなくても。  連なっている。 「世道紡、君は、どうする?」  漠然とした問いに、俺は一拍の間を置いて、明確に頑なに答えた。 「“願う”。人間なんて、願うだけの生き物だろ」  若紫が苦笑する。 「君は本当にひねくれているね」 「お前は本当に読めない奴だよ」  だからこそ。 「「“また、会おう”」」  裏の語りは、終わらない。
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