第一章 弐・裏語り

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――――  旧図書館から“帰宅”する俺は、鞄の中に入れた収穫物の重さに辟易しながら未塾学園の外に出た。  外は明るい。  まだ午前中だし、学校は平常時と同じ時間割りを組んでいるのだから人気(ひとけ)が少ないのも頷ける。  ところが。  ここまで、“人気が無い”のは明らかに“忌常”だ。人一人くらい見つけられても良いだろうに。  月夜の照らす深夜でも人気が全くないというのはあり得ないし、それでも酔っ払った親父なんかが千鳥足で闊歩している姿も見られるのだ。  午前の時間帯なら、散歩している婆さんや専業主婦たちがいて、それが普通の事である筈なのだけれど。 『みーつけたみーつけた!』  その時。道路の向こう側から、揺れる人影が。肩を左右に揺らしつつ、対向車線から車が来ることも気にしない様子で歩いてきている。  背丈は一八〇ぐらいか。  黒いスーツ姿のせいで解りづらいが筋肉質な体型に、ふざけているのか顔には“ひょっとこ”のお面が被されていた。 『世道紡をみーつけた。やったねやったねッ。万歳キャッホーイ!』  ……何だ、コイツ。 「お前、誰だ……」 『誰とは聞き捨てならないね。では教えよう。ボクの名前は、人呼んで、パンドラ禍面(かめん)! 悪を倒し、正義をなぶり、一般人を撲殺するのが役割なのさ!』 「…………」
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