第一章 弐・裏語り

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 ……へぇ。  この変態野郎はどうやら頭でもイカれているのか、この智謀の世道紡に喧嘩を売っているようで、真に愚か者だと侮蔑するしかない選択をしてしまったようだ。  それなら、例え、借金をしてでもこの喧嘩を買ってやるさ。何しろ、ここ最近で、一番ムカつく糞野郎から売られたんだからな。  当然の買い物だろう? 「お前、イドだろ?」 『違うよ。ボクはパンドラ禍面。いつの世も現れて、いつの世の善悪もぶっ壊して、いつの世の“(わざわい)も面食らう”、そんな(やく)を引き起こす存在なのさ』  別に、お前の存在理由なんか聞いてねぇよ。 「御託はいいさ」 『えー、何で何で? 先に訊いてきたのは紡なのに! もう、最近流行りのツンデレなのかな?』  ツンツン、と指先を俺に当てるような動作を何回も繰り返すパンドラ禍面は、クネクネと気持ち悪く身体を上下左右に揺らして、ゆるがせて、湯楽した。 「取り敢えず、ボコボコにしてやるよ」 『キャハハハハ、カッコイイ!! さすが、ホンモノは違うねー! じゃあさじゃあさ、ボクも本気を出したりしても良いかな!?』  世道紡対パンドラ禍面。  人気の無い道路で、お互い裏側の人間であることを意識した上で、それでも相手をぶちのめすことに決定したその意思を、俺は、どう評価すれば良いのだろうか。
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