67人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
イドも同様だ。肉弾戦が得意で身体が強固な戦士タイプと、特殊な忌能で人間を惑わし狂わす魔法使いタイプに分類される。
身代直は生粋の戦士タイプ。まぁ、アイツのソピアーである『自分が嘘を吐けない代わりに、相手の嘘を見抜く』ことは、戦闘でかなり有利に働く能力だから、そこはそれ、身代直こそ本来の意味で現実的な“生粋の戦士タイプ”なのかもしれない。
俺の場合は、魔法使いタイプに近いだろう。
何しろ、『この世界にある、ありとあらゆる存在の強弱を操る』ソピアーなのだから。
『キャハハ、早く早く! もうボク待てないよー!』
「うるせぇ!」
片腕に鞄を持ったまま、俺はパンドラ禍面に近付く。上段蹴り。かわされる。その勢いを活かし、今度は逆の足で回し蹴り。それも回避。パンドラ禍面は屈んでいる。合わせる。下段蹴りに移行。しかし、当たらない。
『蹴り技が豊富だね』
「バカにしてんだろ!」
後方に跳躍したパンドラ禍面。
俺は敢えてそれを追わなかった。ただソピアーを使う。発動させる。とある存在の強弱を強めて、とある存在の強弱を弱めた。
『ん?』
パンドラ禍面が怪訝な表情を浮かべて、俺から視線を“外した”。それはそれはある意味意識的に、けれど無意識に。
パンドラ禍面は俺の存在を認識できなくなったのだから。
最初のコメントを投稿しよう!