第一章 参・存在形成

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 認識できなくなった、と言うのは少々語弊があるな。認識できなくなったのではなく、認識すべき対象が足元を転がる石に移っただけなのだから。  石の存在感を極限まで強めることで、パンドラ禍面は嫌がおうでもそちらを見なければならない。  けれど、これだけで俺への認識を解除できた訳ではないんだ。反対に、俺の存在感を極限まで弱めることで、相対的に、俺へと向けられた意識は石へと移行された。 『おいおい――』 「これが俺の忌能だぜ!」  軽く跳躍したまま接近。パンドラ禍面の側頭部に狙いを付けて蹴りを繰り出す。完全な蹴撃。パンドラ禍面には、蹴りが迫っていることすら認識できていないことだろう。 『グ――――ッ』  吹っ飛んだ。先程の俺みたく錐揉み状に吹っ飛び、道路に身体を擦り、ブロック塀に頭から突っ込んだ。  蹴りのインパクトからこの間約一秒。常人には何が起きたのか、一切解らなかっただろうな。まぁ、ここに一般人は居ないわけだけど。 「にしてもな……」  こういう戦闘は久方ぶりだったのだが、何とかソピアーの使い方を間違わなくて良かった。安堵安堵。一歩間違えれば一気に危険が増すからな。  勘当されてから、修練――なんか恥ずかしい。ここは練習と言い換えよう。  その練習がようやく役に立った。ふぅ、感謝したのって初めてかも。 「おい、パンドラ禍面。さっさと起き上がってこいよ」
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