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瓦礫と化したブロックの山に押し潰されたパンドラ禍面に、言葉を投げ掛ける。俺は解っていた。こんな簡単に、あの存在が居なくなっていないことに。
それに、訊きたいこともある。
『やれやれ……。ちょっと、君の事を過小評価し過ぎたかもねー。あー、痛い痛い』
傷一つ追わずに、パンドラ禍面は瓦礫の山から這い出て、相変わらず趣味の悪いひょっとこのお面を被り着けたまま、俺の前まで歩いてきた。
警戒体勢。
けれど、訊く。
「お前、どうして俺を狙う。誰かに頼まれたからなんだろ?」
『あー、うん。頼まれたって言ってもいいのかな……うーん、そこら辺、ボクには良く解らないんだよねー。だって、ほら、ボクって頭悪いから』
素直に答えてくれるとは思わなかったな……。結局、要領を得ない答えだったけれど。
こういう時に身代直がいてくれれば、あっさりとパンドラ禍面の真意が解ったんだが、それは、ちょっとおこがましい部類になる。
全く、面倒くせぇ。
「誰から頼まれた」
『誰から? あぁ、その問いには簡単に明瞭にスッキリと答えられるよ! キャハハ、流石はボクだよね。さーさー、存分に褒め称えてくれたまえ!!』
高笑いするパンドラ禍面は、一頻り笑って身を捩った後、右手の親指でひょっとこのお面を着けた自分自身を指差して、
『何を隠そう、ボクに命令を下したのはこのボクなのさ!』
と言った。
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