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「…………悪いんだが、なぞなぞに付き合ってる暇はねぇんだよ」
『いやいや、ボクの答えって結構的を得ていると思うんだよねー。だって、ほら、考えてもみなよ。人間に命令を下すのは、いつだって脳味噌だ。それはその人自身の唯一の決定権を持つ、うーん、そうだなー、“神様”と言い換えても良いかもしれないよね。だったらさ、ボクに命令を下せるのは、その神様だけだよ。だから、ボクに指示したのはボクだってことになるんだよね』
コイツ……。
おそらく、俺の推測が正しければ今の台詞の中に出てきた“神様”という単語をわざと使ってきやがったな。
「へぇ。じゃあ、お前の後ろに“下上”がいる、なんてことは無いわけだな?」
『あれ? あれあれあれあれ?』
パンドラ禍面は大袈裟に身ぶり手振りを開始した。なんだ、これ? 言語を失ったか、あるいは既存の言葉で伝えられない意味を身体で表現しようとしているのか。
いや、そのどちらでも無いとしたら……。
『まさか、まさかまさかまさかまさかまさかまさか、世道紡ともあろうお方が、ボクの素性に対して未だに解っていなかったとは……。うーん、これはねー、ちょっと驚きだよね』
「あぁ、解っているさ。今のはかまをかけたんだって」
『へっへー、そりゃそうだよね』
パンドラ禍面は名乗る。
名前。人間の誰しもが持ち、無くしてはならない大切な物。アイデンティティーの一種。個性。両親との絆。仲間との絆。恋人との絆。
それが、響いた。
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