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『ボクの名前は、世道式御。つまるところ、ボクは君のパパなんだよ、世道紡』
……はい?
「……は、親父?」
『あれあれあれ? 何その度肝を抜かれたような表情は。もしかしてー、ボクの事を下上の一人だと思ったのかな? 違うよ、全然違うね。“下上ちはや”みたいなチート制のあるソピアーなら別だけど、ボクはほら、世道式御だからね』
パンドラ禍面――否、自称世道式御こと親父は、優雅に一礼。クルンと爪先で一回転して、俺に投げキッス。
いやいやいやいや、待てよ!
親父!? こんな人間性じゃなかったぞ! もっと厳格で口煩くて、けれど醜い思考ばかりしていて、こんな馬鹿みたいな、いかにもチャラ男みたいな格好も性格もしていなかったぞ!
人間は、そんな簡単に短時間で大幅に変われることなんて、在りはしないのに……。
「嘘だな」
鼻で笑い、パンドラ禍面を一蹴。
『嘘? あれ、嘘? 何が? 君の存在が、それともボクの存在が? いやいや、ちょっと待ってくれよ、嘘と決めつけるための要素が多すぎて、何が嘘で何が本当なのか、訳解らなくなってきたよ!』
「てめぇが、俺の親父の世道式御だってことが嘘だって言ってんだよ!」
思わず吼える。
混沌とした混乱状態の俺と空気と雰囲気を打開するために、パンドラ禍面の放つ怪しげで異なる言語を亡き物にしようと思ったのだけれど。
『嘘じゃないよ、世道紡。ボクは、ほら、七歳の頃、君を虐待していただろ?』
それは……俺と親父しか知らない事実だった。
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