67人が本棚に入れています
本棚に追加
「何で、それをてめぇなんかが知ってんだ……」
『へっへー、もっと有るよ。修練と称して君の頭をかち割った事もあるし、川に突っ込んで溺れさせたこともあるし、根性焼きをさせたこともあるよねー』
撲殺か。溺死か。火の付いた煙草を皮膚に押し付けられた痛みで気が狂うか。いずれにせよ、俺は小さい頃、親父から酷い虐待を受けていた。
それを知っているのは、親父と俺だけだ。
「誰から聞いたんだよ、そんな話」
『キャハハハ、まだ信じられないのかな? ボクだよ、パパだよ、世道式御なんだよ? ほら、抱き着いて来てごらん、パパーって』
「うるせぇ」
声は違う。顔は解らない。性格も違う。背丈は確かに同じぐらいだけど、そんな奴ら、この世界にはたくさんいる。
つまり、奴は偽物!
『あ、何か今、決心が着いたって顔だよね? おおっと、どうなったのかな。なんて。ボクにはどうでもいいんだよ、だって、ボクは君のパパなんだからね』
「…………」
『ほら、最初の方でも言っただろう? 君を殺すつもりなんて無いってさ。今日のところはこれでおしまい。いやー、良い喜劇だったよね』
……当の本人は道化にされた気分だけどな。
『じゃ、これでボクは帰るから。じゃあね、バイバイ、グッバイ、さようなら、グッドラック、またね、お別れだね、また今度、お疲れ様でしたー』
と。やけにたくさんのお別れを述べてから、パンドラ禍面はこの場を立ち去った。一瞬で。追い掛ける隙もなかった。
最初のコメントを投稿しよう!