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たくさんの混乱を残して。いとも簡単に。平然と。去っていった。
昨夜の怪異と云い、今回の事と云い、もう何がなんだかわけ解んねぇよッ!
「クソッたれ!」
「一週間振りに再会した妹に向かって“クソッたれ”とは良い御挨拶ですね、クソ兄貴」
背後から声がした。聞き慣れたそれに、俺はバッと振り返って正体を確かめる。
天使のような少女がいた。
否、少女のような天使がいた。
「よ、よぉ、解。どうしてこんなところに――」
「兄貴、黙って頂けますか?」
「あ、はい」
何というか、この問答だけで俺たちの力関係を明確にご理解頂けたことだろう。
俺が下である。兄貴なのに下。妹なのに上。『これっておかしいんじゃねぇの?』と思ったのは幼い頃の短い間だけだった。
俺は、改めて新たな来訪者の姿を視認する。網膜に焼き付ける。今日の妹の姿は、最高で孤高で至高だった。
世道解。俺の妹。年齢十二歳。小学六年生。ちょっと生意気になってきた年頃。にも拘わらず、勘当されて独り暮らしを余儀無くされた兄のために、週に一度、得意のご飯を振る舞ってくれる、これこそが本来あるべき妹の姿であると世界中に言い触らしたくなるような、そんな俺の事が大好きな妹の鏡である。
それで、姿格好。
ここ重要。
テストには出ないけど超重要だ。
まずは背丈。一三〇センチ。貧乳。この前、まな板と誉めたのだけれど、何故か思いっきりぶん殴られた。不可解。足も手も細い。白い。顔付きも俺に似て小顔で可愛い。子役としてデビューしたら、他の子供なんかを差し押さえて圧倒的人気をはくして売れるだろう。断言する。まず注目される。次に売れる。最後に数千万のファンが殺到。一躍、時の人だ。
だって、女神なんだから。
そして、今はその可愛さに拍車が掛かっている。ミニスカに黒のニーソックス。絶対領域が眩しい。神々しい。舐めたい。……ああ、ウソウソ。頬ずりしたい。できれば、小一時間ぐらい。
シスコン?
いいや、違うな。
ただ純粋に、妹の事が大好きなだけだ。
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