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イムカァァあああああああッッ!!
思わず叫ぶ。何も知らない妹のために心の中で。殺意と憎悪を込めた雄叫びをあげる。絶叫する。
何やってんの、あいつ!?
ちゃんとジャージを着させて、床に寝かせ着けてきたのに。ベッドに触れないようにちゃんと足とか縛ってきたのに。
というか、何で全裸になる必要があるんだよッ!
「兄貴、聞いていますか?」
「あ、いえ、聞いていませんで――」
最後まで言えなかった。無理無理。解の目が据わっている。虚無。憎しみが無い。虚ろだ。どこまでも。深みが無い。底が、無い。
「なにあれ?」
「いや、その、説明しにくいんだけど――」
「勘当されて独り暮らしをしている可哀想な兄貴のために、週一で料理を振る舞っているこの可愛い妹を裏切る行為ですよ? 解っていますか?」
「裏切るって、そんな――」
「あんな光景を見せつけて、まだ裏切っていないと言えるんですか?」
もし、俺が解の立場になって考えてみよう。全裸でベッドに横たわる女を見たら、それはそれはショックだろう。
解のベッドに男が寝ていたら、俺は間違いなくその男を殺している。
……そう考えると、解の言う裏切りは的を得ている。
「理由とか言い訳とかもあるけど、悪かった。あれは、その、別に恋人とかじゃないんだ」
「本当ですか?」
「ああ、絶対だ」
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