第一章 参・存在形成

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 イムカァァあああああああッッ!!  思わず叫ぶ。何も知らない妹のために心の中で。殺意と憎悪を込めた雄叫びをあげる。絶叫する。  何やってんの、あいつ!?  ちゃんとジャージを着させて、床に寝かせ着けてきたのに。ベッドに触れないようにちゃんと足とか縛ってきたのに。  というか、何で全裸になる必要があるんだよッ! 「兄貴、聞いていますか?」 「あ、いえ、聞いていませんで――」  最後まで言えなかった。無理無理。解の目が据わっている。虚無。憎しみが無い。虚ろだ。どこまでも。深みが無い。底が、無い。 「なにあれ?」 「いや、その、説明しにくいんだけど――」 「勘当されて独り暮らしをしている可哀想な兄貴のために、週一で料理を振る舞っているこの可愛い妹を裏切る行為ですよ? 解っていますか?」 「裏切るって、そんな――」 「あんな光景を見せつけて、まだ裏切っていないと言えるんですか?」  もし、俺が解の立場になって考えてみよう。全裸でベッドに横たわる女を見たら、それはそれはショックだろう。  解のベッドに男が寝ていたら、俺は間違いなくその男を殺している。  ……そう考えると、解の言う裏切りは的を得ている。 「理由とか言い訳とかもあるけど、悪かった。あれは、その、別に恋人とかじゃないんだ」 「本当ですか?」 「ああ、絶対だ」
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