第一章 参・存在形成

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 無論、強力すぎる忌能のため制限が幾つかある。  一つ。有機生命体である人間や動物の存在だけは破壊も修復も不可能。  生きているモノに解のソピアーは使えない。意味を為さず、忌みを成さない。結構な事だろ。人間や動物の有り様にまで手を出したら、今頃、世道解の精神は崩壊している。  一つ。無機物の存在から同様の存在を譲渡する場合、絶対に上限が発生する。  今回の場合だと、破損されたコンクリートに対し、無事なコンクリートの存在を譲渡することで修復しているのだけれど、その際、同じ場所から一定の存在分しか分け与えられないのだ。  色々な箇所から継ぎ接ぎして、ようやく破損された部分を直せる。  一つ。修復の際、世道解は眼を閉じて動くことが不可能となる。  何よりも存在の有り様を操っているんだし。俺よりも高い次元の操作をしているんだから、そのぐらいの集中が必要になるのは当たり前だろう。  その間、俺はじっくり妹を視姦でき――。……いやいや、成長の具合をマジマジと観察できるからラッキーだ。  本当にありがとうございます。 「存在形成、選」  最も適合率の高い存在を選び、集め、合わせ、直す。一連の作業を精密に迅速。壊れた道路やブロック塀が元の姿へと戻る頃には、時刻は正午直前だったが。  肩で息をする解を(ねぎら)う。 「お疲れ」 「様は?」 「……お疲れさま、解」 「様は?」 「…………お疲れさま、解様」  冷遇過ぎる、俺の扱い……。
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