第一章 壱・世の道は

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 もしも言葉の要らない世界だったら、この世に文学は登場し得なかっただろう。文学、漫画、大雑把に分類するならば、取り合えず文字が存在を主張する物は、全て、一切合切、この地球上に姿を現さなかったに違いない。  登場人物のいない物語が無いように。物語、それ自体が無いのなら登場人物も居はしないし、元々いないことになる。  主人公も、悪党も、善人も、英雄も、盗賊も、学生も、テロリストも、魔王も、勇者も、美人も、物語を彩り造り形を成すモノ全てがいない、存在しないことになるのだ。  僕ーーいや、それは表の主人公の一人称だ。止めておこう。分別するためにここはカッコ良く決めるべきだ。  “俺”は、そんなことを小さい頃からずっと繰り返し、再三、考えた。もしもこの地球上に文字が存在を許されなかったら、今の日本や他の国々はどうなっていたのかを。  結局、答えは出ない。  俺は神様じゃない。  全知全能で、万能で、人間やその他の生き物を超越した完璧で完全で、その割には多種多様に存在して、世界を構成して創造した絶対不可侵のモノ。  ーー神ーー。  これは、表の主人公(嘘吐き)が運命的な出逢いを果たし、表の物語を形作っていく最中に起きた、  裏である、《俺》の最低最悪の物語。
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