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と、歩きながら一人漫才みたいことを心の中でしている(もしテレパシー受信者がいれば、俺って相当イタイ人間だよな?)と、一応持ち歩いていた携帯電話が唐突に鳴った。
表示された番号は、固定電話。
この携帯電話の番号を知っている人間は一人しかいない。誰からだと疑問に思う事も、出ようかどうか迷う必要もないのだから、
案外、便利じゃね?
「はい、もしもし」
通話ボタンを押し、お決まりの挨拶を口にすると、電話口から嗄れた声が返ってきた。
『おー、紡か? 久しいのう。ちゃんと元気にやっとるか?』
「これはこれは“元”当主様。何かご用ですか?」
『やけに、元、を強調するのう。我が倅に、お前の父に当主を継がせたことをそんなに怒っておるのか?」
「当たり前だね。何であんな糞野郎が当主になってんだよ。次期当主は明らかに俺だったろうが」
大きくなりそうな声をギリギリで押し留める。
家族間の口論を他人に聞かれたくなかった。その程度の人間味溢れる心情は、まだ俺の心にも残っていたらしい。
俺は心中で己を嘲笑い、蔑んだ。
おいおい、世道紡。
まだお前は、人間でいるつもりなのかよ。
……もうお前は、ニンゲンで化け物で裏側の生き物だろうが。
『そうは言ってものう。“戦闘”の“若紫”、その分家である“智謀”の“世道”は完全世襲制じゃぞ。儂からお前に当主交代しとったら、家系の中から反発する奴等が大規模な暴動を起こしたじゃろうて』
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