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剣「うん。ただいま。」
返事をしたら、顔を赤くし、俯いて十円玉を後ろに隠した。
確かに、硬貨なんかをかじってる姿など、人には見せられないだろう。
俺は葉月を抱き上げたまま、悶え苦しむ皐月を無視してリビングへと向かう。
剣「げっ」
父さんだ。
玄関に置いてある靴で薄々気付いていたが、やはり実物をみると物怖じしてしまう。
名前は重和。大学の講師をやっているが、その肉体はまさに格闘家そのものだ。
父「『げっ』とは、随分と挨拶が上手くなったようだな、剣よ」
剣「ご、ごめんなさい…」
もちろん、性格も厳つい。
正に一家の大黒柱だ。
何者も逆らうことは許されない。親戚の話によると、昔は本当に格闘家だったらしい。
最近、本当は「ヤ」のつく仕事でもしてんじゃないかなと思うようになってきた。
もちろん、口にしたら病院送りだろう。
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