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──ギルド
報酬を見返りに様々な仕事を請け負う者達が集う場所。
その内容は人探し、運搬、要人護衛、モンスター討伐、果ては暗殺など多岐に渡る。
各ギルドを仕切るギルドマスターに、ギルド会員となる為の用紙を提出するだけで誰でも簡単に登録が可能、その瞬間からすぐにでも仕事を請けられる。
仕事内容によっては多額の報酬が出るため、一攫千金を狙ってギルド会員になる者も多い。
フェルズ大陸南部にある大都市エルミド、大陸一の大きさを誇るエルミドのギルドは今日も賑わいを見せていた、モンスター討伐の武勇伝を自慢気に語る戦士、昼間の仕事で得た報酬を使い酒を飲む者、丸テーブルを囲み次の仕事の打ち合わせをするグループ。
そんな屈強な男達で溢れかえるギルドに、異彩を放つ者が入ってきた。
栗毛の長い髪を後ろで束ねた少女、場違いなその雰囲気に一斉に視線が釘付けになる。
場違いなのはその格好だった、ギルドで仕事をするからには少なからず危険が伴う、大陸で発生している戦争の影響もあり、男女問わずギルドで仕事を請け負っている者は鎧を身に纏っているからだ。
少女の腰には剣が一本、見るからに魔法使いではない、にもかかわらず身に付けているのは鎧ではなく、白いシャツに薄紅色のベスト、胸には茶色のリボンが二つ、茶色の短いスカートに黒のブーツ。
冷やかしか……
興味はすぐに失われ皆すぐに談笑を再開した。
そんな雰囲気を余所に少女は歩を進める。
少女は真っ直ぐにカウンターに向かった、カウンターの中にいるギルドマスターも冷やかしだと思ったのか、入ってきた時に一瞥しただけでまたグラスを磨いている。
少女はカウンターに肘をついて身を乗り出し、口を開いた。
「ねぇ、オジサンがこのギルドのマスター?」
ギルドにいる戦士達より更に一回り大きい体躯をしたマスター、ランニングシャツから溢れ出しそうな筋肉が存在をアピールしている。
禿げ上がった頭に無精髭を生やした風貌は、ギルドのマスターというよりは酒場のオヤジといった方がしっくり来るだろう。
マスターは無精髭を軽く触り、こう返した。
「ああ、そうだ。お嬢ちゃんこんなところに何の用だい?」
「ギルドの会員登録をしたいんだけど」
「駄目だ」
「なんで?」
「お嬢ちゃん歳はいくつだ?」
「14」
「…………はぁ」
マスターは溜め息を漏らし、壁を指差した、少女もそちらを向く。
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