第一章 元傭兵

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壁には貼り紙があった。 「あの紙を見てこい」 言われるがまま貼り紙の元に歩いていく少女、周りから酒の匂いが漂い、顔をしかめながらも貼り紙の元に辿り着く。 貼り紙にはギルドの規約が書き連ねてあったが、その内容の一文にはこうあった。 ギルド規約第3項 15歳以下は会員になることは出来ない。 少女は踵を返してマスターの元に戻った。 「さっきのは嘘、私ホントは16だっ……」 「帰れ」 問答無用で突き放すマスター、だが少女も簡単には諦めず食い下がる。 「危険だから駄目なんでしょ?わたし強いし、全然問題ナシ!」 目を細めて少女を見るマスター、全く信じていない。 「私これでもボルボ10体を一人で狩れるんだよ?」 袖を捲り右腕で力瘤を作る仕草をするが、その細腕には全く力瘤は出来ていなかった。 「あのなぁ、お嬢ちゃん……」 マスターが再度説得を試みようとした時、ギルドの扉が開かれた。 現れたのはまたも女。 だが少女の時とは違い、ギルドの空気が一瞬にして変わった。 腰まで伸びた漆黒の髪、黒いグローブ、黒いシャツに、スリットの入った黒のロングスカート、黒のブーツと全身黒ずくめの女、腰には緩やかなカーブを描く刀。 整った顔立ちで美人といって差し支えない。 女はカウンターの右端、窓際の席に腰掛けた。 「綺麗な女の人……」 自身も可愛い顔立ちをしている少女が呟いた。 「いらっしゃい」 マスターがウォッカとグラスを女の元に持っていき、静かに置くとまた少女の元に戻ってきた。 「あの人は?」 「知らんのか?シェナを。 21歳の若さにもかかわらず、先の戦争で最も敵兵を殺したと言われる伝説の元傭兵、どういう訳か今は傭兵を辞めてギルドで仕事をしてるがな」 「ふ~ん」 「金は充分すぎるほど稼いでるはずだがなぁ、なんでまたギルドなんかに…… 殺人狂の考える事はよく解らん」 グラスにウォッカを注いだシェナが口を開いた。 「聞こえているぞ」 怖いもの知らずの少女はマスターの制止を振り切りシェナに近付いた。 「わぁ~、細くて珍しい剣だね。これ何ていう剣?」 「………………」 シェナはウォッカを口に運び、一気に飲み干すと、少女の問いには答えずまたグラスにウォッカを注いだ。
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