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少女はマスターの元に戻り小声で話し掛ける。
「な~んか暗い人だね。
ねぇ、あの剣って見たことないんだけど、どこの街で売ってるの?」
「あれはこの大陸には存在しない剣だ、前に本人から聞いたんだがな、カタナとかいう物らしい、東の国の武器みたいだな」
「へぇ~」
(値打ち物なのかな・・・?)
少女の頭に真っ先に浮かんだのはその疑問だった
フェルズより海を隔てて遥か東の国・・・交易がさほど盛んではなかったため、そこからもたらされる品は元々希少価値が高い物が多かった
今ではフェルズ全土を包む戦火の影響で細々とした交易さえも途絶しているのでその傾向はさらに強くなっている
少女の目は見慣れないカタナに釘付けになっていた
(アレを換金すればかなりのお金になりそうだよね、やっぱ)
「そんなにギラギラした目で見られては落ち着いて酒も飲めんな。そんなにコレが気になるのか?」
少女のそんな邪な考えを察してか、シェナが窓の外に目を向けながら少し煩わしそうに言った
「あ、そんなんじゃ・・・!」
言い繕おうとした言葉が続かない
シェナは一瞬少女に目を向けたが、また興味なさげに窓の外へ視線を移し再びウォッカを喉に流し込んだ
・・・・・・
後に残るのは気まずい沈黙
その様子を見かねたマスターが少女に声をかける
「で、なんで嬢ちゃんみたいな子がココに?」
「ええと・・・」
一瞬言い澱んだが二言目にはキッパリと言い切る
「私、どうしてもお金を稼がなくちゃいけないの!」
真剣な眼差しをマスターに向ける少女。
「…………」
「…………」
先に折れたのはマスターだった。
「分かったよ、訳ありなんだろ?ちょっと待ってろ」
そう言うと奥から一枚の紙を持ってきた。
「これにサインしろ、それが終われば今日からお前もギルドメンバーの仲間入りだ」
「えっ?いいの?」
思わぬ展開に声が裏返った少女。
「このままじゃシェナの刀を奪いに襲いかねんからな、ここで暴れられてギルドをグチャグチャにされたらたまらん」
(……バレてる)
少女の頬を冷や汗が伝った。
「仕事を紹介してやるよ、ほら早くサインしな」
「わかった」
サラサラと名前を紙に書く少女。
「サーヤ……か、今からお前はギルドのメンバーだ」
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