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「貴方、こんな所で何してるの?」
彼女は愛らしく小首を傾げて京矢に問い掛けてきた。
「……上條先輩こそ」
京矢は平静を装い、静かに問い返す。
彼女――上條響子の、小柄で可愛らしい外見の下に何が隠れているか知っている分、うっかりときめくことも出来ないのだ。
「あたしは今、アンタに聞いてるのよ?太秦」
「映画村?!じゃなくて、藤沢です、藤沢」
「今はそんなことどうでもいいの。あたしの質問に答えなさい」
有無を言わさず、という形容がぴったりの口調で言って、響子は京矢へ一歩詰め寄る。
見慣れた制服のプリーツスカートの裾が、ひらりと揺れた。
「ここ、地元なんですよ。ただ暇潰しにぶらぶらしてただけです」
「あらそう?」
……今舌打ちが聞こえた気がするのは、気のせいであって欲しい。
更に更に、彼女の右手が羽織られたコートの内ポケットに入れられていた気がするのも、気のせいだと思いたい。
京矢の知る限り、彼女の内ポケットの中には、必ず凶器がひとつやふたつ仕込まれている。
あなたはそんなに何かを痛めつける機会を常々狙ってるんですか?とたまに問い詰めてみたくなる程だ。
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