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「次はどこへ向かうのだろう。誰か教えてくれないか」
呟く声は、歩みを止めない足が置き去りにしてしまった。
止めようがない自分の身体に、私は少し諦めを持ってしまった。
たどり着いたのは市役所。しかも自宅のある市ではない、けれど見覚えがある景色にある市役所だった。
実家がある市の市役所だ。
何をするつもりなのか、私の身体は市役所の中へ。
手に入れたものは二枚の紙だった。
婚姻届と離婚届。
その二枚を手に、私は市役所から飛び出した。向かっているのはどうやら実家がある方だ。
『パパのお嫁さんになりたい』と、幼い私は無垢に願ったことがある。
そんなことを思い出した。
何を馬鹿な、親子は結婚出来ない。
私がそう思っていると、実家が見えてきた。
私の身体は速度を落とすことなく、実家を通り過ぎた。
そして、実家の隣にある家に入っていく。
「うわっ、なっ……えっ!?」
家の中にはおじさんとおばさん。闖入者に驚く二人に向けて、私はこう言った。
「パパと結婚する」
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