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二人を電気コードで拘束し署名と印鑑を捺させた私は、おじさんを解放して離婚届を役所に出すよう命じた。
おばさんは床に転がしたまま。
婚姻届を受理してもらえるようになり次第、すぐに出すことと指示した後、私は再び外へ出た。
なんと恐ろしい。
ついに私の言葉が他人を傷付けはじめた。
「もう嫌だ、これ以上他人を巻き込まないで」
その言葉は私を追ってこない。
次は何が起こるのか。
必死に思い出す、過去に口にした言葉を。
その後、私はゲーム屋でソフトを買った。持っていなかったハードを買った。中学生の頃欲しかった携帯電話を買った。
その内に気付いた法則は、叶えられた望みは私を動かさないということだ。
おそらく、役目を果たせなかった言葉だけが、その言霊だけが私を動かすのだろう。
この不可思議な現象は、私が言葉にした叶わない望みが尽きるまで続く。
中学の頃に欲しがった物は大体買ったはずだ。
次は高校の頃、私が抱いた叶わぬ望みを思い出そうとした。
金物屋に入っていく私に、私は恐ろしいことを思い出してしまった。
私が高校生だったあの日。
虐めに遭っていた。
そして何度も、私を虐めるあの女達を殺したいと枕に向かって叫んだことを。
手にかかる包丁の重さが、その予想に裏付けを与えていた。
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