6人が本棚に入れています
本棚に追加
「全員、助からなかったそうだよ」
国選弁護士、という方が私に教えてくれたのは、そんな既知のことだった。
確実に死ぬよう、毎日暗い部屋で考えた殺し方だ。あれで死なぬは人ならず、といったものだろう。
「君は彼女達から酷い虐めを受けていた。違いないね?」
何度も聞かれた内容に、私は粛々と頷く。
素人考えだけれど、その事実があったとしても量刑に変わりはないように思えた。
それだけのことを、私はしたのだ。
「……まだ、話せないのかい?」
私が口を開くことはない。
目の前にいた警察にも、ガラス越しの弁護士にも、モニタ越しの裁判員にも、何も語るつもりはないのだ。
「君に話してもらわなきゃいけないことは沢山あるんだけど」
何が叶わないのか、今の私に判断ができると思えなかったからだ。
しかし、弁護士の彼が「一つだけ、質問がある。答えてほしい」と聞いてきたことだけは、聞き流せなかった。
「償うつもりは、あるのかな?」
その質問は、今の私にとって最も答えたいものだ。
勿論、ある。
自分で蒔いた種だ。
何をしてでも、償いたい。
答えない私に、施設の係員が面会時間の終了を告げた。
ため息をつき、片付けを始める弁護士を背に、私は再び牢に戻される為立たされた。
一言だけ、声を掛けようと思ったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!