ある日、幸せな午後の屋上で

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午後の陽射しが少し暑く感じるようになりだした5月の半ば。 私は校舎の屋上にいる。 天気は快晴、晴れた空には雲ひとつない青空が広がっている。 きっと見ているだけで心が満たされる、そんな満天の青空なのだろうけど、私はそれに目もくれず、じっと下を向いて俯いている。 これが今の私の幸せ。 見つめる先には膝の上で眠る彼。 さっきまでほんのり紅く上気していたその顔は、今はすっかり穏やかで、安らかに寝息をたてている。 いつもは素直じゃない彼だが、今は普段のあまのじゃくな感じが嘘のようにかわいらしい寝顔だ。 たまらなくなってその頬を指でつっついてみる。 「うぅ~なのぉ、やめぉ…」 ほんのり口元を綻ばせ、ニヤけながら私の名前を呼ぶ彼、夢の中の私はいったい彼に何をしているのだろうか。 夢の中の私、どうやったら彼のこういう表情を引き出せるのか教えてください! と、彼の夢の中の自分に聞いてみるけれど、当然答えてくれるはずもない。 仕方がないのでそんな彼の顔を見て気持ちを満足させることにする。 今の彼がずっと続けばいいのになぁ なんて本気で思ったりはしないけれど、 「たまにはこれくらい素直な態度で接してくれてもいいのに…」 と、こちらは割と本気で、寝ている彼に語りかけてみる。 すると彼は、さっきとは打って変わり、狸寝入りのようにじっとしたまま堅い表情になっているのだった。 「………ヒロのバカ」 そんな彼を見て、いつか彼の夢の中の自分に負けないくらいに、彼をデレデレにしてやろうと密かに決心する私なのであった。 ~~~♪ そんな私の思いを察してくれたのか、聞き慣れたチャイムの音が校舎中に響いた。 そして膝の上の彼がゆっくりと瞼を開く。 幸せな時間は長くは続かない、なんて言葉の通り、私の幸せはあっけなく終わりを告げる。 でもそれも悪くないかな、と私は思う。 だって今から彼と一緒に過ごす幸せな時間か始まるのだから。
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