第一章

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だけど、僕の苦しみを、妻は決して見過ごさなかった。 三年目に入って、明らかにやる気と生気を失った僕を見て、彼女は僕のことを心配した。 最初は何も言わなかった。 だけど、僕はよほど酷い顔でもしていたのだろう。 彼女はある夜、並んで寝ている布団の中で、会社を辞めても構わないと言った。 もちろん、その時、会社を辞めたならば、僕達には他に生きていくすべは無かった。 妻は仕事をしていなかったし、僕が仕事を辞めてしまえば、収入は途絶え、僕たちは今日食べる食事にすら困ることになってしまうのは目に見えていた。 だから僕は、頑張ると、強がりを言うよりほかに無かった。 そして、僕は三年目の終わりを迎えることになった。
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