第七章

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ウェイトレスがコーヒーを持ってやってくると、ユカリはストローでグラスの中のコーヒーと生クリームをかき混ぜ、そして一気に飲み干した。 グラスの中にはまだ殆ど原型をとどめたままの氷が四個と、生クリームのかけらが残っていた。 ユカリは空になったグラスの中を何度かストローでかき回す。 氷とグラスがぶつかって、カラカラと音を立てる。 「得ようとしなければ、何も得ることなんてできない」 ユカリが言った。 「そうかもしれない。だけど、そのために僕たちは多くの回り道だってしなければならない」 ユカリは何も言わなかった。 そして、黙って目を閉じる。 そして、しばらくして目を開けると、「きっと、あなたは何も得ることはできない」と言って、立ち上がった。 そして、何も言わずに僕に背を向けると、店を出て行った。 僕に残されたのは、氷が入ったグラスだけだった。
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