第八章

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杏は缶ビールを一本飲み終え、冷蔵庫から新しい缶ビールを取り出して飲み始めた。 僕の持っている缶の中には、まだずいぶんビールが残っている。 「ところで、さっきも言ったけれど、シャワーでも浴びてきたらどうかしら? 少しは酔いがさめるわよ」 杏が言った。 「そうするよ」 僕は答えてから、ビールを一気に飲み干し、シャワールームへ向かった。 脱衣場で服を脱ぎ、熱めのシャワーを頭から浴びる。 スッと酔いが醒めていくのが僕にはわかった。 頭がひどくすっきりとして、体が軽くなっていくような感覚があった。 僕はこれまでに何度も酔ってシャワーを浴びたことがあるけれど、そのような感覚を覚えたのは初めてだ。 どうしてなのかは僕にもわからない。 だけど、僕の頭は一滴のアルコールも飲んでいないときのように、はっきりと物事を認識していた。
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