第八章

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僕がシャワールームから出ると、杏はベッドに横たわっていた。 僕がベッドに近づいても杏は起き上がる気配を見せない。 目はしっかり開いていたから、起きているのだということはすぐにわかった。 バスローブがはだけて、杏の白い胸の膨らみが微かに覗いている。 僕はベッドの足元の辺りに腰を下ろした。 すると、杏が足で僕の腰の辺りを触った。 「ねえ、私、本当にもう少しだけあなたと話がしたかっただけなのよ」 杏が言った。 「それはわかったよ」 僕は答えた。 「黙ってラブホテルなんかに連れてきたことを怒っているのなら謝るわ」 「別に怒ってなんかいないよ」 「よかった」 杏は小さな声で言い、「だけど……」と続けて何かを言おうとして口をつぐんだ。
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