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僕はゆっくりと杏の隣に横たわった。
杏の胸の辺りがゆっくりと上下するのがわかる。
僕はしばらく杏の胸の辺りを眺めていた。
杏の胸は、時計の針のように規則正しく上下に動いていた。
「ねえ」
唐突に杏が言った。
僕は慌てて杏の胸から視線を反らす。
「どうしたの?」
僕は言った。
「あなたはまだ私の話を聴きたいと思っているの?」
僕は横になったまま、黙って頷いた。
「つまらない話よ?」
僕はもう一度、黙って頷いた。
「どこまで話したかしら?」
「県内でもトップクラスの進学校の高校に入学したところまで」
「そうだったわね」
杏はそう言うと、ゆっくりと大きく空気を吸い込み、ゆっくりと吐き出した。
杏の胸は今までの規則性を失い、大きく上下した。
その様子は、これから話そうとしている内容を、頭の中で上手く整理しているように見えた。
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