第八章

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杏は束の間の沈黙の後に、ゆっくりと話し始めた。 「私の進学した高校はさすがに県内でもトップクラスだったせいもあって、県内の優秀な生徒が集まっていたの。それまで、中学校では常に一番の成績だった私も、授業についていくのに必死だった。そして、五月に初めての試験があったの。私もずいぶん勉強してその試験に挑んだの。だから、それなりの自信はあったの。だけど、蓋を開けてみると、私の自信なんて脆くも崩れ去ったわ。簡単な試験ではないと覚悟はしていたものの、思った以上のものだったの。私はせいぜい全ての欄を埋めるのが精一杯だった」 「そんなに難しかったの?」 「ええ、とても。こんなの高校一年生に解けるわけないじゃないって叫びたいくらい。だけど、こんなに一生懸命勉強してきた私がこんなに難しいって感じているんだから、周りの人間だって同じだと思っていたの」
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