第八章

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「私はきっと、ただ自分の成績に言い訳をしていただけなのよ。学年で成績トップの女の子には友達どころか恋人もいて、毎週日曜日にはデートをして、勉強以外にも習い事をいくつもこなしていた。ピアノに習字、バレエも習っていたはずだわ。それでも彼女はトップの成績をおさめることができるの。自分があまりにも小さな人間に見えて仕方が無かったわ。そして、私は唯一の支えを無くして、壊れ始めていた。私はそれまでにもまして、勉強に打ち込むようになった。それこそ、一日に二時間くらいしか眠らず、食事中も勉強するようになった。もちろん、友達なんてできなかった。そして、七月の二回目の試験では八十番、十月の三回目の試験では三十番、十二月の四回目の試験では十番、そして三月の学年末の試験では二番になった。その間、成績トップだった彼女は、ずっと一番であり続けた。そして、一年たっても、結局私は彼女に勝つことはできなかった。彼女が何度も恋人とデートをし、友達とボーリングやカラオケに行き、ゆっくりと食事をして睡眠をしている一方で、私がただひたすら寝る間も惜しんで勉強をしていたにも関わらず」 「だけど、二年生になって、君は彼女に勝つことができた」 僕は杏の話を推測して、付け足してみた。 だけど、杏は静かに首を横に振った。
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